同社は、100回の操作データで学習したロボット制御AIを活用して、公開ベンチマーク環境の「RLBench」によるシミュレーション評価を行った。ロボットアームを使って、毎回異なる受話器の位置から電話機に正しく置く作業や、鍋のふたを持ち上げる作業、傘立てから傘を取り出す作業など8種類の作業をそれぞれ500回行った際の平均成功率は72%で、従来手法の36%から大幅に改善。世界最高精度を達成したという。特定の作業においては、従来手法では79%だった成功率が99%に向上した例もあった。
「作業の中には成功率が50%を切るものがあったが、それでも従来手法に比べて大幅に改善している。成功率が高い領域から実用化していきたい」と金子氏は話す。
各種ベンチマークの結果(出典:東芝)
今後は、さらなる精度の向上を進め、ロボットアームによる作業への応用や溶接などの製造工程の自動化、AGV(無人搬送車)やドローンなどの移動体の自動制御、医療機器の操作などへ応用を検討しているという。
製造や保守、物流などのさまざまな現場で労働力不足や熟練者の減少などが課題となっており、ロボットによる自動化が急速に進められているが、複雑な作業をさせるためには、対象物の位置や向きなどの状態を推定したり、状態ごとの動作計画などを専門家が設計し開発したりする必要があり、人手による学習も行われている。
国内製造業では、2030年には38万人の人手不足が想定され、帝国データバンクの調査によれば、運輸・倉庫分野では63.8%の企業が人手不足になると回答している。これらの課題解決にロボットの活用が期待されている。東芝は、こうしたトレンドに今回の技術が貢献できると見ている。
なお今回の術は、理化学研究所 革新知能統合研究センター長で東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授の杉山将氏との共創の成果だという。また、5月13日から横浜市のパシフィコ横浜で開催されるロボティクス分野の国際学会「ICRA」で詳細が発表される予定だ。